Technical Report
がん:固定した臨床組織からのクロマチン免疫沈降では腫瘍特異的エンハンサーのプロファイルが明らかになる
Nature Medicine 22, 6 doi: 10.1038/nm.4085
臨床病理検体で通常行われる組織固定の際に広く導入される架橋結合は、アーカイブ化された組織標本をChIP-seq法(chromatin immunoprecipitation followed by next-generation sequencing:クロマチン免疫沈降・塩基配列解読法)によって解析する際の大きな妨げとなっていて、これが臨床的に注釈付けされた貴重な組織標本群のエピゲノム研究を大幅に制限している。今回我々は、固定組織のクロマチン免疫沈降・塩基配列解読法(fixed-tissue chromatin immunoprecipitation sequencing:FiT-seq)について報告する。これは、ヒストン標識を正確に検出するために、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織標本から可溶性クロマチンを信頼性高く抽出できる手法である。FFPE標本から得られたFiT-seqデータは、同じ腫瘍の新鮮凍結標本から得られたChIP-seqデータと一致することが分かった。我々はまた、複数のヒストン標識を用いてクロマチン状態のマップを作成し、さまざまな種類の腫瘍に由来する臨床標本で、がんがどの組織由来かを容易に識別するのに使えるシス調節エレメントを明らかにした。FiT-seq解析によって明らかになった腫瘍特異的なエンハンサーおよびスーパーエンハンサーは、さまざまな組織に見られる既知の発がんドライバーと相関しており、クロマチン状態が遺伝子調節にどのように影響を与えるかを解明するのに役立つだろう。