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がん:発がん性Ezh2変異はヒストン3リシン27トリメチル化の大規模な再編により腫瘍を誘導する

Nature Medicine 22, 6 doi: 10.1038/nm.4092

B細胞リンパ腫や黒色腫では、EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(EZH2)に変異が頻発するが、これらの変異が発がんに果たす役割については不明である。本研究では、最も広く見られるEzh2の体細胞性機能獲得型変異(ヒトではEZH2Y646F、マウスではEzh2Y641F)を条件的に発現するマウスモデルについて報告する。マウスのB細胞やメラノサイトでEzh2Y641Fを発現させると、それぞれ浸潤性の高いリンパ腫や黒色腫が生じた。抗アポトーシスタンパク質Bcl2の過剰発現や、腫瘍抑制タンパク質p53(マウスではTrp53にコードされる)の欠失はリンパ腫の進行をさらに加速させたが、がんタンパク質Mycの過剰発現ではこのような加速は見られなかった。変異型Brafの発現は黒色腫の進行をさらに加速した一方で、変異型Nrasがんタンパク質では加速が見られなかった。Ezh2Y641Fの発現は、ヒストンH3のトリメチル化リシン27(H3K27me3)の量を全体にわたって増加させたが、同時にこの抑制性指標の全体的な再編も引き起こし、多くの遺伝子座で転写の増加に伴ってH3K27me3の消失などが見られた。以上の結果は、Ezh2Y641Fがポリコームに調節される遺伝子座の抑制と活性化の両方を誘導するクロマチン構造の大規模な再編を介して、リンパ腫や黒色腫を誘導することを示唆している。

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