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がん治療:コヒーシン複合体の構成因子であるSTAG2あるいはSTAG3の喪失は黒色腫でBRAF阻害に対する耐性をもたらす
Nature Medicine 22, 9 doi: 10.1038/nm.4155
プロテインキナーゼのBRAF(B-Raf proto-oncogene, serine/threonine kinase)は発がんドライバー因子で、黒色腫での治療標的である。BRAF阻害剤(BRAFi)は高い奏効率を示し、Val600に変異が生じているBRAFタンパク質が発現されているタイプの黒色腫患者の生存を延長するが、患者の大多数が薬剤耐性を示すようになる。本論文では、コヒーシン複合体サブユニットをコードしているSTAG2(stromal antigen 2)あるいはSTAG3が失われた黒色腫細胞ではBRAFiに対する耐性が生じることを明らかにする。BRAFi耐性が生じた患者由来の複数の腫瘍試料、およびBRAFi耐性黒色腫細胞株では、STAG2の機能喪失型変異だけでなくSTAG2あるいはSTAG3タンパク質の発現低下が見つかった。STAG2もしくはSTAG3の発現をノックダウンすると、BRAFVal600Glu変異の生じた黒色腫細胞および腫瘍異種移植片でBRAFi感受性が低下した。STAG2が失われると、CCCTC結合因子を介した二重特異性ホスファターゼ6(DUSP6)の発現が阻害され、MAPキナーゼ(MAPK)シグナル伝達(MAPKのERK1およびERK2を介する伝達、以後ERKシグナル伝達とする)の再活性化につながった。今回の結果は、BRAFi耐性のこれまでに知られていなかった遺伝的機序を明らかにしたもので、STAG2およびSTAG3の腫瘍抑制機能についての新しい手掛かりを与えるものである。