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がん治療:システイナーゼ/シスチナーゼによるL-システイン/シスチンの全身的枯渇は活性酸素種を増加させて腫瘍の増殖を抑制する
Nature Medicine 23, 1 doi: 10.1038/nm.4232
がん細胞は遺伝的変更や異常増殖のために、非悪性細胞に比べてより高い酸化ストレスを活性酸素種(ROS)から受けている。そのため、がん細胞の生存と増殖には抗酸化物質グルタチオン(GSH)の維持が必須である。ROS濃度が上昇した状態では、内因性のL-システイン(L-Cys)産生ではGSHの合成に不十分である。そのためxCT(−)輸送体を介して、主にジスルフィド型のL-シスチン(CSSC)として存在するL-Cysを取り込む必要がある。我々は、薬理学的に最適化したヒトの改変型システイナーゼ/シスチナーゼの投与は、マウスと非ヒト霊長類で細胞外のL-CysとCSSCプールを持続的に枯渇させることを示す。この酵素のがん細胞への投与は細胞内GSHを枯渇させ、ROSを高いレベルに維持することで選択的に細胞周期停止と細胞死を引き起こす。マウスではこの投与を数か月間にわたって継続した後も明確な毒性は見られなかった。システイナーゼ/シスチナーゼは、前立腺がんの同種移植片の増殖を抑制し、前立腺がんと乳がんの異種移植片の両方で腫瘍増殖を低下させ、ヒトの慢性リンパ球性白血病に類似した症状を発症するTCL1-Tg:p53−/−マウスでの生存期間中央値を倍にした。酵素により血清中のL-CysとCSSCプールを枯渇させると、多数種の腫瘍の増殖が抑制され、しかも長期間わたって忍容性が非常に良好であったことから、システイナーゼ/シスチナーゼは広範囲にわたる悪性腫瘍で抗酸化細胞応答を不活性化する、安全で効果的な治療法となると考えられる。