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腸オルガノイド:機能する腸神経系を持つヒト多能性幹細胞由来腸組織

Nature Medicine 23, 1 doi: 10.1038/nm.4233

消化管の腸神経系(ENS)は、運動性や上皮透過性など、多様な多くの機能を制御している。ENSの発達あるいは機能の乱れはよく起こるが、ENSが機能している状態の腸の生物学的性質や疾患について調べるためのヒトモデルは存在しない。我々は、胚性および誘導性の多能性幹細胞(PSC)を用いる組織工学的手法により、機能を持つENSを含むヒト腸組織を作出した。さらに、ヒトPSC由来の神経冠細胞(NCC)と発生中のヒト腸オルガノイド(HIO)を組み合わせることで、正常な腸ENSの発達を再現した。HIOに組み込まれたNCCはin vitroで間葉内に移動して、ニューロンおよびグリア細胞に分化し、カルシウムトランジェントの周期的な波によってニューロン活性があることが示された。ENSを含むHIOをin vivoで成長させると、腸筋層間神経叢および粘膜下神経叢に類似した神経グリア構造が形成され、これは機能するカハール介在細胞を備え、収縮伝播の波を調節する電気機械結合が見られた。さらにこの系を用いて、PHOX2B遺伝子の変異によって引き起こされるヒルシュスプルング病の細胞レベルおよび分子レベルでの基盤を調べた。今回の結果は、我々が知る限りで初めての、機能するENSを備えたヒトPSC由来腸組織の実証であり、この系がヒト消化管の運動性障害の研究にどのように使えるかを明らかにしている。

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