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遺伝性疾患:視床のmiR-338-3pは22q11.2微細欠失症候群のモデルで聴覚に関連する視床皮質の機能崩壊とその遅い発症を仲介している
Nature Medicine 23, 1 doi: 10.1038/nm.4240
22q11.2欠失症候群(22q11DS)は若齢期の行動異常と関連付けられており、患者はさらに後になって精神疾患などの統合失調症の徴候を発症するリスクが高い。聴覚の視床皮質(TC)投射は、22q11DSのマウスモデル(以後、22q11DSマウスとする)で特異的に崩壊している神経回路であることが最近になって明らかにされた。22q11DSマウスでは、マイクロRNA(miRNA)プロセシング因子をコードする遺伝子Dgcr8のハプロ不全によって、聴覚視床のドーパミン受容体Drd2の増量、視床皮質投射の抗精神病薬に対する感受性異常、聴覚性驚愕反応の異常が生じる。本論文では、22q11DSマウスでは聴覚関連TCのこのような表現型の発症が遅く、発症はmiR-338-3pの年齢に依存する減少と関連していることを明らかにする。miR-338-3pはDrd2を標的とするmiRNAで、ヒトとマウスの両方で視床に集中的に存在している。miR-338-3pが枯渇している22q11DS成熟マウスにこれを補充してやると、TCの異常が回復し、miR-338-3pをコードするMir338の欠失あるいはmiR-338-3pの発現低下は、TC機能や行動の欠陥を模倣し、これらの欠陥の年齢依存性を消失させた。従って、miR-338-3pの欠失は22q11DSマウスでの聴覚関連TCシグナル伝達を崩壊させるのに必要かつ十分であり、miR-338-3pは22q11DSに関連する精神疾患の発症機序に関わっていて、発症が遅くなるように制御している可能性がある。