Review
免疫:健常時と疾患時における記憶T幹細胞
Nature Medicine 23, 1 doi: 10.1038/nm.4241
記憶T幹(TSCM)細胞は記憶リンパ球の希少サブセットで、自己複製のための幹細胞様能力に加えて、記憶T細胞およびエフェクターT細胞サブセット全体を再構築するための多分化能を持つ。TSCM細胞が記憶Tリンパ球階層系の頂点に位置する、最小限の分化しかしていない細胞であることを示す証拠は、マウス、非ヒト霊長類およびヒトで集まりつつある。本総説では、TSCM細胞がその極度に長い寿命と免疫を再構築するロバストな能力のために、ヒトの生理的および病的過程の多くで中心的な働きをしていることを実証する新しい知見について述べる。また、TSCM細胞の幹細胞性を治療でどのように使えば、がんや感染症のためのワクチンや養子T細胞療法の効果を増強できるのか、その方法について論じる。一方、自己免疫、成人T細胞白血病やHIV-1などの、TSCM細胞によって引き起こされ、維持される疾患の治療については、TSCM細胞を破壊できると思われる方法について考察する。