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白血病:ミトコンドリアの酸化的リン酸化を標的として治療抵抗性の慢性骨髄性白血病幹細胞を根絶する

Nature Medicine 23, 10 doi: 10.1038/nm.4399

メシル酸イマチニブなどの第二世代や第三世代のc-Abl特異的チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による慢性骨髄性白血病(CML)の治療は患者の生存期間をかなり延長した。しかしTKIは分化した細胞をもっぱら標的としていて、白血病幹細胞(LSC)は除去しない。したがって、微少残存病変を標的として治療抵抗性獲得や疾患再発を防止するには、治療に用いることのできるLSC選択的な新しい標的(群)を見つけ出す必要がある。我々は、悪性形質転換には細胞の代謝変化が関与しているので、これが形質転換した細胞に、特定の攻撃に対する感受性を選択的に付与するかもしれないと考え、CML LSCでそのような脆弱性を探索した。CML患者由来で幹細胞が豊富な(CD34+およびCD34+CD38)細胞群と、分化した(CD34)細胞群の両方で代謝解析を行い、これらの細胞と対応する正常な細胞のシグネチャーと比較した。安定同位体を用いたメタボロミクスと機能解析を組み合わせることで、始原CML細胞は生存を酸化的代謝の活性上昇に依存していることが分かった。また、イマチニブと抗生物質チゲサイクリン(ミトコンドリアのタンパク質の翻訳を阻害する)を組み合わせて投与することにより、in vitroおよびヒトCMLの異種移植モデルの両方でCML LSCが選択的に根絶されることも明らかになった。我々の知見は、微少残存病変のあるCML患者の治療にTKIとチゲサイクリンとを組み合わせて用いる方法について調べるための強力な論理的根拠を示している。

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