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肺がん:Keap1の喪失はKras駆動型肺がんを促進し、グルタミン分解への依存を生じさせる

Nature Medicine 23, 11 doi: 10.1038/nm.4407

KRAS変異型の肺腺がん(LUAD)の治療は、がんタンパク質KRASの直接阻害が困難であることから、がん治療における重大な難問となっている。この問題に取り組む方法の1つは、KRASの変異と共に生じることが多い変異を明らかにすることで、こうした変異はそれ自体が腫瘍の治療的脆弱性につながる可能性がある。KRAS変異型LUAD腫瘍の約20%はKEAP1遺伝子中に機能喪失変異を持つ。KEAP1遺伝子はKelch-like ECH-associated protein 1をコードしていて、これは内在的抗酸化応答のマスター転写調節因子であるNFE2L2(nuclear factor erythroid 2-like 2、以下NRF2とする)を負に調節する。KEAP1の変異が高頻度に見られることから、肺の腫瘍形成には酸化ストレス応答が重要な役割を担うと考えられる。我々は、KRAS駆動型LUADのマウスモデルでCRISPR–Cas9を基盤とする手法を用い、Keap1喪失が肺がんの進行に及ぼす影響を調べた。Keap1の喪失によりNRF2が過剰に活性化され、マウスではKRAS駆動型LUADが促進されることが分かった。CRISPR–Cas9を基盤とする遺伝的スクリーニングとメタボローム解析を組み合わせて使って、Keap1あるいはNrf2変異型のがんがグルタミン分解の増強に依存していること、この性質はグルタミナーゼの薬理学的阻害を介して治療に使えることが示された。さらに我々は、グルタミナーゼ阻害に反応すると考えられるKRAS/KEAP1変異型あるいはKRAS/NRF2変異型の肺腫瘍を持つ肺がん患者を層別化するための論理的根拠を明らかにした。

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