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神経膠芽腫:細胞質のp53は発がん遺伝子誘導性グルコース代謝とアポトーシスを連動させており、神経膠芽腫での治療標的となる
Nature Medicine 23, 11 doi: 10.1038/nm.4418
発がん性シグナル伝達と代謝経路の間のクロストークは、がんの新たな治療戦略につながる可能性がある。本研究では、EGFR誘導性のグルコース代謝の急性阻害では最小限の細胞死しか誘導されないが、患者由来の神経膠芽腫(GBM)細胞の一部ではアポトーシスの閾値が低下することを示す。機構解析からは、グルコース消費が低下した後、細胞質のp53による内因性アポトーシスの誘導をBcl-xLが遮断することが明らかになった。EGFR誘導性のグルコース代謝を標的とし、脳透過性低分子idasanutlinによるp53の薬理学的安定化を組み合わせたところ、同所性の神経膠芽腫異種移植片モデルで合成致死が引き起こされた。EGFRシグナル伝達の阻害程度も、EGFRの遺伝学的解析も、この併用療法への感受性を予測をするのには不十分だった。しかし、[18F]フルオロデオシキグルコース取り込みに対する迅速な阻害的影響(非侵襲性の陽電子放射断層撮影法で評価する)の検出はin vivoでの治療応答の有効な予測バイオマーカーとなった。まとめると今回の研究は、発がん遺伝子シグナル伝達、グルコース代謝、細胞質p53の間の重要なつながりを明らかにしており、このようなつながりはGBMで、またおそらくは他の悪性腫瘍でも、併用療法の標的として使用できると予想される。