肥満:肝臓でのエクトジスプラシンA発現の上昇は骨格筋での肥満誘導性インスリン抵抗性の原因となることが、マイクロRNAスクリーニングにより示された
Nature Medicine 23, 12 doi: 10.1038/nm.4420
マイクロRNA(miRNA)の40%以上はタンパク質をコードする遺伝子のイントロン内に位置し、このようなイントロン由来miRNAの多くは、その宿主遺伝子と共調節される。このような共調節の場合、宿主遺伝子の産物とイントロンmiRNAは協働し、生物学的に重要な経路を協調的に調節することができる。そこで我々は、肥満マウスモデルの肝臓で調節が異常になっているイントロン由来miRNAのスクリーニングを行い、これまでに性質が分かっていなかったタンパク質コード宿主遺伝子で、肥満関連インスリン抵抗性と2型糖尿病の病因に関わっている可能性があるものを探索した。この方法によって、肥満マウスの肝臓では、連鎖性無汗性外胚葉形成不全症(XLHED)の原因遺伝子で、エクトジスプラシンAをコードするEdaと、そのイントロン由来miRNAであるmiR-676の両方の発現が上昇していることが分かった。さらに、肝臓でのEDA発現は肥満のヒト被験者でも上昇していて、発現は体重減少にともなって低下し、その肝臓での発現は全身のインスリン抵抗性と相関していた。また、db/dbマウスでmiR-676の発現を低下させると、肝臓での脂肪酸酸化に関与するタンパク質の発現が増加し、炎症性シグナル伝達の構成因子の発現が低下することも分かった。さらに、マウス肝臓でのEda発現はPPARγとRXR-αを介して制御されていて、肥満状態では循環中のレベルが上昇し、骨格筋のJNK活性化とIRS1の抑制性セリンリン酸化を促進する。これらの知見と一致して、機能獲得および機能喪失実験により、肝臓に由来するEDAが全身のグルコース代謝を調節することが明らかになり、肥満状態ではEDAが骨格筋のインスリン感受性を障害する可能性のあるヘパトカインであることが示唆された。