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免疫療法:インテグリンβ7の活性型構造はCAR T細胞療法のための多発性骨髄腫特異的な新規標的である
Nature Medicine 23, 12 doi: 10.1038/nm.4431
がん特異的な細胞表面抗原は、モノクローナル抗体(mAb)を基盤とする免疫療法の理想的な標的だが、これまでにトランスクリプトーム解析あるいはプロテオーム解析で同定され尽くしたと考えられている。本論文では、インテグリンの活性型構造が多発性骨髄腫(MM)特異的な治療標的となりうることを示す。我々は10,000を超える抗MM mAbクローンをスクリーニングし、MMG49がMM特異的mAbであることを明らかにした。MMG49はインテグリンβ7分子の一部を特異的に認識する。MMG49が結合するエピトープはβ7鎖のN末端領域にあり、不活性型構造のインテグリンでは抗体が接近できないが、活性型構造では露出されると予測される。MM細胞ではインテグリンβ7の発現が上昇しており、また恒常的に活性化しているため、MMG49に対する反応性が高くなる。一方、インテグリンβ7+の正常リンパ球などの他種類の細胞では、MMG49への結合はほとんど検出できなかった。MMG49由来のキメラ抗原受容体(CAR)を導入したT細胞は、正常な造血細胞を損傷することなく、抗MM効果を発揮した。これらの結果は、MMG49 CAR T細胞療法はMMの有望な治療であることを示すとともに、受容体タンパク質の生理的ではあるが希少な構造ががん免疫療法の標的となり得ることも示している。