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食欲調節:アスプロシンは中枢作用性の食欲促進性ホルモンである
Nature Medicine 23, 12 doi: 10.1038/nm.4432
アスプロシン(asprosin)は最近見つかったホルモンで、絶食によって分泌が誘導され、肝臓によるグルコース産生を促進する。本論文では、循環中のアスプロシンが血液脳関門を通過し、食欲促進性のAgRP+ニューロンを、cAMP依存性シグナル伝達経路を介して直接活性化することを明らかにする。このシグナル伝達は、下流に位置する食欲抑制性のプロオピオメラノコルチン(POMC)陽性ニューロンのGABA依存的様式での阻害を引き起こす。その結果、食欲が刺激され、脂肪過多や体重増加が進む。ヒトでは、アスプロシンの遺伝的欠損が食欲不振や極端な痩せを特徴とする症候群を引き起こす。この表現型は同じ変異を持つマウスでも見られ、症状はアスプロシンの投与によって完全に回復できる。また、肥満状態にあるヒトおよびマウスでは、循環中アスプロシン濃度が病的に上昇しており、血中アスプロシンをモノクローナル抗体で中和すると、肥満マウスで食欲と体重が低下し、さらに血糖プロファイルが改善されることが分かった。従ってアスプロシンは、糖生成機能を果たしているだけでなく、中枢神経に作用して食欲を促進するホルモンであり、肥満症と糖尿病の両方の治療における治療標的候補である。