肝臓脂肪を取り除く:NAFLD新規動物モデルの必要性
Nature Medicine 23, 12 doi: 10.1038/nm.4459
肥満は世界的流行病だとまでいわれており、肝臓では肥満によって肝細胞中に脂肪が蓄積されていく。脂肪蓄積が過剰なアルコール消費とは関係なく起こるのが非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)であって、症状は穏やかな単純性脂肪肝から始まり、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に至ることがある。NASHは肝臓の炎症が特徴で、後期になると肝臓に繊維性瘢痕組織を生じ、肝硬変や肝がんが引き起こされ、最終的には末期臓器不全に陥る。NAFLDは現在、臨床での大問題となっている。米国では全人口の25に当たるほぼ7500万人がいずれかの段階のNAFLD患者と推定されていて、単純性脂肪肝の患者の6〜30%程度がNASHに進行する。肥満状態になるとNAFLDの発症リスクが上昇し、2型糖尿病が共存する場合はリスクが特に高くなる。NASHも含め、NAFLDのさまざまな症状に対しては、現在のところ有効な薬理学的治療法はない。
NAFLDの治療薬に画期的進歩が見られない理由は複数あるが、比較的正確に症状を再現する動物モデルがないこと、患者の状態を正確に診断するために侵襲的な試験(特に肝臓の生検)が必要なこと、ヒトでのNAFLDの進行がはっきり解明されていないことが大きな障害となっている。
最近使われているマウスモデルは、症状はNASHに似ているが、進行速度や繊維化の程度などに問題が残っている。しかし、臨床試験への移行を確実にするには、齧歯類よりもヒトに近い、もっと大型の動物モデル、とくに非ヒト霊長類モデルの方が適している。最近報告されたサルのモデルはメタボリック症候群を自然発症し、肥満、高脂血症、脂質異常症と高血圧に加えて軽症のNASHも起こるが、このような非ヒト霊長類モデルが容易に、かつ再現性高く作製できるかどうかはまだ不明である。NAFLDの治療薬候補は抗炎症薬や抗酸化剤、合成胆汁酸、ペルオキシソーム増殖活性化受容体のアゴニストなどまだそれほど種類が多くない。しかし、こうしたモデルが使用できるようになれば、臨床試験テストへの進行は加速するだろう。
だが、NASHの治療に関する臨床試験にもさまざまな問題があり、NASHの診断や薬剤応答の監視には生検が使われていて、これが臨床試験への参加を制限し、試験にかかるコストや時間が増加している。このような問題を解決するためにも、もっと高い再現性を持ち、薬剤の有効性を予想できる動物モデルの開発は重要である。動物モデルがあれば、臨床試験からもっと多くの成果を得ることが可能になるのだ。