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糖尿病:マウス筋肉でのHDAC3欠失はインスリン感受性と運動持久力との解離を引き起こす
Nature Medicine 23, 2 doi: 10.1038/nm.4245
2型糖尿病とインスリン抵抗性は、筋肉でのグルコース利用の低下と運動パフォーマンスの低さに関連している。本研究では、エピゲノム修飾因子であるヒストンデアセチラーゼ3(HDAC3)の骨格筋特異的な大幅な減少は、マウスで重篤な全身性のインスリン抵抗性を引き起こすが、筋力が低下するにもかかわらず、筋肉疲労に対する耐久性と抵抗性は顕著に増強されることを示す。この一見矛盾した表現型は、HDAC3が大幅に減少した筋肉でのグルコース利用の低下と脂質酸化の増加が原因であって、AMPデアミナーゼ3(Ampd3)によるアナプレロティック(補充)反応の活性化と分枝鎖アミノ酸の異化によって引き起こされた、エネルギー源の切り替えである。これらの知見は、筋肉疲労と2型糖尿病発症にアミノ酸異化が重要な役割を持つことを明確に示している。さらに、骨格筋でのHDAC3のゲノム占有状態は概日時計により制御されていることから、これらの結果は、概日時計による骨格筋の生体エネルギー統御を仲介するエピゲノミックな調節機構の概要も明らかにしている。今回の知見は、1日のうちの決まった時間での運動や、HDAC3を標的とする薬剤の使用が、全身的なエネルギー源代謝や運動パフォーマンスを変化させるのに役立つ可能性を示唆している。