がん治療:SAMHD1は急性骨髄性白血病でのシタラビン応答性のバイオマーカーであり、治療標的である
Nature Medicine 23, 2 doi: 10.1038/nm.4255
ヌクレオシド類似体のシタラビン(Ara-C)は、急性骨髄性白血病(AML)の一次およびサルベージ化学療法計画に不可欠の構成因子である。Ara-Cは細胞に取り込まれた後、治療活性をもつ三リン酸代謝産物のAra-CTPに変換され、主に増殖中の細胞でのDNA合成阻害によって抗白血病効果を発揮する。現在、かなりの割合のAML患者でAra-C療法の有効性を示す応答が見られず、Ara-Cに対する治療応答性を予測するための信頼できるバイオマーカーはない。SAMHD1はデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)のトリホスホヒドロラーゼで、生理的に生じたdNTPをデオキシリボヌクレオシドと無機三リン酸に分解する。SAMHD1は、競合するdNTPを枯渇させることでがん細胞のヌクレオシド類似体薬に対する感受性を上昇させると考えられてきたが、我々は今回、SAMHD1がAML細胞でのAra-Cの細胞毒性を低下させることを明らかにする。その機序は、dGTPで活性化されたSAMHD1がAra-CTPを加水分解し、その結果として白血病細胞でAra-CTPが著しく減少するというものである。遺伝学的欠損、変異によるトリホスホヒドロラーゼ活性の不活性化、あるいは特化ウイルス様粒子を用いたプロテアソーム分解を介してSAMHD1活性を喪失させると、AML細胞でAra-Cの細胞毒性が増強される。レトロウイルスを用いたAML移植のマウスモデルやAML成人患者の後ろ向き解析では、Ara-Cを含む治療に対する応答性は、SAMHD1発現と逆相関していた。これらの結果は、SAMHD1がAra-Cを用いる療法に最もよく応答すると思われるAML患者の層別化のためのバイオマーカー候補であり、またAra-Cに抵抗性を示すAMLを治療するための標的となることを明らかにしている。