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心疾患:サーチュイン1は心臓のナトリウムチャネルの脱アセチル化により心臓電気活動を調節する

Nature Medicine 23, 3 doi: 10.1038/nm.4284

心臓の電位依存性Na+チャネル(NaV1.5、SCN5A遺伝子にコードされる)は内向きの脱分極性心臓Na+電流(INa)を透過させ、正常な心臓電気活動に不可欠である。SCN5Aの遺伝性機能喪失変異は、心臓電気インパルスの発生と伝達に欠陥を生じさせ、さまざまな不整脈表現型と関連している。今回我々は、デアセチラーゼであるサーチュイン1(Sirt1)がNaV1.5のリシン1479(K1479)を脱アセチル化し、リシンの脱アセチル化が仲介するNaV1.5の細胞膜への移送により、INaを誘導することを示す。マウスでは、心臓のSirt1が欠損するとNaV1.5でK1479の過剰なアセチル化が誘導され、心筋細胞膜でのNaV1.5発現が低下して、INaが減弱し、心臓伝導異常と不整脈による若齢期死亡につながる。心臓のSirt1が欠損しているマウスの不整脈表現型は、NaV1.5機能喪失の結果起こるヒト心臓不整脈を再現した。Sirt1の活性あるいは発現の上昇は、NaV1.5のリシンアセチル化の減少につながり、これはNaV1.5の細胞膜への移送とINa誘導を促進する。K1479をアセチル化できない残基に変異させたNaV1.5は、野生型NaV1.5に比べてピーク時INaが増加し、Sirt1による調節を受けないが、K1479がアセチル化を模倣するように変異したNaV1.5では、INaが減弱する。心筋症および臨床的伝導疾患を有する患者の心臓では、NaV1.5のK1479が過剰にアセチル化されている。従って、Sirt1はNaV1.5を脱アセチル化することにより、INaと心臓電気活動の調節に非常に重要な役割を果たしている。

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