Letter

がん:びまん性内在性橋グリオーマでポリコームとBETブロモドメインタンパク質を治療標的とする

Nature Medicine 23, 4 doi: 10.1038/nm.4296

びまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)は悪性度の高い小児脳幹腫瘍で、患者の死亡までの期間が短く、また死亡率がずっと一律で改善されていないことが特徴である。これらの腫瘍の80%以上で、ヒストンH3のヘテロ接合型の点変異が存在し、リシンからメチオニンへの置換(H3K27M)が起こっている。この変異型ヒストンの発現は、PRC2(polycomb repressive complex 2)を介するH3K27トリメチル化(H3K27me3)のレベルを低下させ、これがDIPGの腫瘍形成の原因事象ではないかと考えられている。しかし、H3K27me3が大幅に減少していても、PRC2の活性はH3K27M陽性のDIPG細胞でなお検出される。我々は、DIPGの病因におけるH3K27MとPRC2の機能的役割を調べるために、H3K27M変異型DIPG細胞のエピゲノムのプロファイリングを行い、H3K27MがH3K27アセチル化(H3K27ac)の上昇と関連することを見いだした。以前に得られた生化学データと一致して、異型H3K27M-K27acヌクレオソームの大半は、活発に転写されている遺伝子座にブロモドメインタンパク質と共局在するが、PRC2はこれらの領域から排除されていた。このことはH3K27Mが、PRC2をクロマチン上にとどめているわけではないことを示唆している。残存するPRC2活性は、神経の分化と機能を抑制することによりDIPGの増殖能を維持するために必要とされる。さらに、DIPG細胞では異型H3K27M-K27acヌクレオソームによるブロモドメインタンパク質の動員の阻害が治療に使用可能かどうかを調べるために、我々はin vivoでBETブロモドメイン阻害剤を用いた治療を試みた。この方法は腫瘍プログレッションを効果的に阻害することが実証され、この種の化合物がDIPGの治療薬候補となることが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度