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CNS疾患:Gpr124は中枢神経系疾患での血液脳関門の完全性維持に必須である
Nature Medicine 23, 4 doi: 10.1038/nm.4309
血液脳関門(BBB)の機能低下は多様な中枢神経系(CNS)疾患の病因として重要であるにもかかわらず、BBBの機能を制御している内皮受容体タンパク質についてはほとんど明らかになっていない。内皮Gタンパク質共役受容体(GPCR)のGpr124は、マウス胎児で前脳の正常な血管新生とBBB機能に必要であることが報告されているが、成体でのこの受容体の役割は知られていない。本論文では、成体マウス内皮でGpr124を条件付きノックアウト(CKO)すると、恒常性を維持しているBBBの完全性には影響がないが、虚血性脳卒中および神経膠芽腫のマウスモデルでは、共にBBBの破壊と微小血管出血が起こり、これに伴って脳血管でのカノニカルなWnt–βカテニンシグナル伝達の減弱が見られたことを報告する。Wnt–βカテニンシグナル伝達の構成的活性化によってGpr124-CKOマウスのBBB破壊と出血性異常は完全に正常化され、内皮細胞の密着結合、周皮細胞による被覆、細胞外マトリックス欠損も回復した。従って、病的状態にある成体マウスでは、Gpr124が内皮Wntシグナル伝達とBBBの完全性に特異的に必要な内皮GPCRであることが明らかになった。この知見は、Gpr124がBBB破壊を特徴とするヒトCNS疾患の治療標的候補であることを示唆している。