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がん:マクロファージ上のデクチン1のガレクチン9による活性化は膵臓がんおよび腫瘍周辺の免疫寛容を促進する
Nature Medicine 23, 5 doi: 10.1038/nm.4314
膵臓に発生した腫瘍のプログレッションには、発がん性変異と協調して働く免疫抑制性の炎症が必要である。しかしながら、腫瘍内免疫寛容の誘導因子は明らかになっていない。デクチン1は、抗真菌免疫に重要な自然免疫受容体だが、無菌性炎症および腫瘍発生におけるその役割は十分解明されていない。さらに、デクチン1の非病原体由来リガンドも見つかっていない。我々は、デクチン1が膵管腺がん(PDA)内のマクロファージに高度に発現していることを見いだした。デクチン1のライゲーションがマウスでPDAのプログレッションを加速させたのに対して、デクチン1をコードする遺伝子であるClec7aの欠失もしくはデクチン1下流のシグナル伝達の阻害は防御的に働いた。また、デクチン1がマウスおよびヒトのPDAで、レクチンであるガレクチン9とライゲーションでき、このことがマクロファージの寛容誘導的プログラム化と適応免疫の抑制につながることも分かった。このデクチン1–ガレクチン9経路を阻害すると、正常なシグナル伝達系を持つ宿主ではPDAのプログレッションに必要ないCD4+およびCD8+ T細胞が再プログラム化されて、抗腫瘍免疫に不可欠なメディエーターとなる。これらのデータから、デクチン1シグナル伝達を標的にすることはPDAに対する免疫療法を開発するための戦略として有望だと考えられる。