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老化:長期的な低用量Δ9–テトラヒドロカンナビノール(THC)投与は老齢マウスの認知機能を回復させる
Nature Medicine 23, 6 doi: 10.1038/nm.4311
老化の進行は、有害で老化を促進する過程(確率論的に起こることが多い)とそれに拮抗する恒常性維持機構の間のバランスによって概ね決定される。内因性カンナビノイド系(ECS)は老化を引き起こす過程を変化させるので生理的恒常性維持機構の一部であると考えられており、このことを示す証拠は相当数得られている。ECSの活性は加齢によって低下するが、これは老齢動物個体の脳組織ではCB1受容体の発現とGタンパク質への結合が低下し、主要な内因性カンナビノイドである2-アラキドノグリセロール(2-AG)のレベルが低下するためである。しかし、内因性カンナビノイドのレベルと老化の症状の間の直接的なつながりはまだ実証されていない。本研究では、低用量のΔ9–テトラヒドロカンナビノール(THC)が、12カ月齢および18カ月齢のマウスの認知機能の加齢に関連する低下を回復させることを示す。行動へのこの影響に伴って、シナプスマーカータンパク質の発現上昇と、海馬の突起棘密度の増加が見られた。THCの投与により海馬の遺伝子転写パターンが回復し、その結果、THCを投与した12カ月齢マウスの発現プロファイルは、THCを投与していない2カ月齢マウスの発現プロファイルと非常によく似たものになった。THCの転写への影響にはグルタミン酸作動性CB1受容体とヒストンアセチル化が必須であり、それらを阻害するとTHCの有益な効果が失われる。従って、老齢個体でCB1シグナル伝達を回復させることは、老化に関連した認知機能障害の治療のための有効な戦略となるだろう。