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脊髄損傷:周皮細胞は慢性期脊髄損傷後の毛細血管の血流や運動機能を障害する

Nature Medicine 23, 6 doi: 10.1038/nm.4331

中枢神経系(CNS)の血管はニューロンの活性により制御されている。例えば、広範囲にわたる血管収縮(血管緊張)は、モノアミンであるセロトニンおよびノルアドレナリンを放出する脳幹ニューロンによって誘導され、局所の血管拡張はグルタミン酸作動性ニューロンの活動によって誘導される。今回我々は、ラットで脊髄損傷(SCI)後のニューロン由来モノアミンの消失に血管緊張が適応する仕組みを調べた。SCIを行った数カ月後、損傷部位より下の脊髄は慢性的な低酸素状態にあり、これはモノアミンが存在しないにもかかわらず、周皮細胞上のモノアミン受容体(5-HT1)が意外にも示す過剰活性によるものであることが分かった。モノアミン受容体のこのような活性が周皮細胞による局所的な毛細血管収縮を起こさせ、これによって血流が虚血レベルに低下する。モノアミンが存在しない状態での受容体活性化は、周皮細胞による微量のアミン(トリプタミンなど)産生によるものであり、周皮細胞は芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)を異所的に発現していて、これによって食餌由来のアミノ酸(トリプトファンなど)から直接微量のアミンを合成していた。モノアミン受容体あるいはAADCの阻害、もしくは吸入酸素量の増加によっても低酸素状態は相当度軽減され、SCI後の運動ニューロンや運動機能が改善される。

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