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肝疾患:Tmbim1は多胞体調節因子であり、リソソームでのTlr4の分解を標的としてマウスやサルの非アルコール性脂肪性肝の発症を防止する。
Nature Medicine 23, 6 doi: 10.1038/nm.4334
患者数が増加中の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)から進行することがある肝臓病態で、肝硬変および肝細胞がんの主な原因の1つである。NASHには、現在のところ薬理学的治療法が存在しない。リソソームによるタンパク質分解の障害は脂肪性肝炎の原因となる重要な過程であり、この過程は多様な疾患で薬剤標的となることが確認されているが、これがNAFLDおよびNASHで治療標的となりうるかどうかはまだ分かっていない。本論文では、TMBIM1(transmembrane BAX inhibitor motif-containing 1)が脂肪性肝炎の効果的な抑制因子で、多胞体(MVB)–リソソーム経路のこれまで知られていなかった調節因子であることを示す。マウスでは、肝細胞でのTmbim1の発現が、高脂肪食が誘導するインスリン抵抗性、脂肪肝および炎症を大幅に抑制した。Tmbim1の作用機構は、ESCRT(エンドソーム選別輸送複合体)と協働してMVB形成を促進し、Toll様受容体4(Tlr4)のリソソームでの分解を増強するというもので、E3ユビキチンリガーゼNedd4lによるTmbim1のユビキチン化がこの過程に必要だった。また、肝臓でのTmbim1の過剰発現は、マウスの重篤なNAFLDやサルでのNASH進行を効果的に阻害することも分かった。これらの知見は、この疾患の重要な因子群のリソソームによるタンパク質分解を、MVB調節因子を標的として適切に機能させることが、有望なNASH治療戦略の開発につながる可能性を示している。