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肝疾患:暖かでストレスのない飼育環境はマウスで非アルコール性脂肪肝を悪化させ、新たな性非依存的疾患モデルが作られる

Nature Medicine 23, 7 doi: 10.1038/nm.4346

肝硬変と肝細胞がんに共通する前兆である非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、世界中で最もよく見られる慢性肝疾患である。NAFLD発症の分子機構の解明は、架橋形成した肝繊維症などのヒト疾患の重篤な症状をよく再現する動物モデルがないことでこれまで妨げられてきた。今回我々は、中性温度飼育環境(通常の20~23℃ではなく、30~32℃)を採用して作出された新規の実験用マウスモデルでは、通常飼育環境を採用した場合とは対照的に、低ストレスのためにコルチコステロンの産生が低下し、炎症応答が増強され、高脂肪食(HFD)誘導性のNAFLDの発症が顕著に促進されることを明らかにする。中性温度条件下での病気の悪化は複数のマウス系統で共通しており、腸管粘膜透過性の上昇、微生物相の変化、ヒトの場合と同様の炎症性経路の活性化が見られた。グラム陰性細菌の駆除や、造血細胞でのToll様受容体4(TLR4)の欠失、IL-17軸の不活性化などは免疫応答性を変化させ、中性温度飼育環境誘導性のNAFLDの悪化を防いだ。また、メスのマウスは通常、HFD誘導性の肥満やNAFLDに抵抗性だが、中性温度条件では雄と同様にNAFLDの全ての特徴を発症した。このように、中性温度飼育環境で飼育されたマウスは重症NAFLDの新たな性非依存的モデルであり、NAFLDの発症機構を細胞レベルと分子レベルで解析するための新たな研究手段となる。

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