Letter

脂質代謝:ヒトAPOC3ミスセンスバリアントとモノクローナル抗体はapoC-IIIの除去

Nature Medicine 23, 9 doi: 10.1038/nm.4390

最近の大規模な遺伝子塩基配列解読により、トリグリセリドに富むリポタンパク質(triglyceride-rich lipoprotein:TRL)の除去経路に関わる遺伝子群中で、LDLコレステロール(LDL-C)レベルとは無関係に冠動脈性心疾患(CHD)に対して保護的に働くまれなコーディングバリアントが見つかっている。これらのバリアントによる保護機構についての手掛かりが得られれば、TRLレベルを低下させる新たな治療法開発が促進されるかもしれない。APOC3遺伝子は、トリグリセリド(TG)脂質分解とレムナントTRL除去の重要な阻害因子であるapoC-IIIをコードしている。本研究では、APOC3のAla43Thr(A43T)バリアントによるTRL低下の機構を調べた結果を報告する。A43TはAPOC3の(タンパク質切断型ではない)唯一のミスセンスバリアントであり、TGを低下させ、CHDに対して保護的に働くことが報告されている。ヒトAPOC3 A43Tヘテロ接合体とヒトAPOC3 A43Tを発現するマウスはいずれも、循環中apoC-IIIレベルの顕著な低下を示すことが分かった。マウスでのこの低下は、A43T apoC-IIIではリポタンパク質への結合が損なわれ、遊離apoC-IIIの腎臓での異化作用が促進された結果である。さらに、TRL中のapoC-III含有量の低下は、循環中TRLの除去を促進した。この保護機構に基づいて、我々はリポタンパク質に結合しているヒトapoC-IIIを標的とするモノクローナル抗体を作製した。この抗体は、ヒトAPOC3を発現するマウスで循環中apoC-IIIの除去を促進し、in vivoでのTRL異化作用を増進する。これらのデータは、APOC3のミスセンスバリアントが循環中TGレベルの低下を引き起こし、その結果CHDからの保護作用を示す分子機構を明らかにしている。この保護機構は、apoC-IIIレベルと循環中TRL負荷を低下させる新たな治療法として使用できる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度