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肝疾患:ALOX12–12-HETE–GPR31シグナル伝達軸は肝虚血再灌流傷害の重要なメディエーターである

Nature Medicine 24, 1 doi: 10.1038/nm.4451

肝臓での虚血再灌流(IR)傷害は臨床でよく見られる問題であり、有効な治療法や確証された薬理学的標的がまだない。我々は統合的な「オミクス」解析を用いて、アラキドン酸12-リポキシゲナーゼ(ALOX12)–12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE)–Gタンパク質共役受容体31(GPR31)シグナル伝達軸が、肝臓IR過程の重要な決定因子であることを突き止めた。ALOX12は虚血時の肝細胞で発現が顕著に上昇して、これが12-HETEの蓄積を促進し、12-HETEは次いでGPR31へ直接結合して炎症応答を引き起こし、肝損傷を悪化させることが分かった。12-HETE産生を遮断すると、マウスやブタでIR誘導性の肝機能障害、炎症、細胞死が抑制される。我々はさらに、肝切除術後の臨床的肝機能障害を非常によく再現する非ヒト霊長類IRモデルを樹立した。このモデルで12-HETEの蓄積を阻害すると、肝臓IRのあらゆる病変が効果的に軽減されたことは注目に値する。まとめると、今回の研究によって機能的に肝臓IRの発生を決定するALOX12–12-HETE–GPR31シグナル伝達軸が関わる、これまでに性質が知られていなかった代謝の再プログラム化が明らかになり、また12–HETEの産生阻害が、IR誘導性肝損傷の予防や治療のための有望な戦略であるとする説が実証された。

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