News NEWS FEATURE:特権をめぐる謎:免疫系がウイルスに精巣での居座りという「特権」を与えてしまうわけ 2018年1月9日 Nature Medicine 24, 1 doi: 10.1038/nm0118-2 精巣は「免疫特権」のある部位、つまり免疫応答や炎症反応が起こりにくい部位の1つであり、これにより内部の精子細胞が自己の免疫系から保護される。だが、免疫特権のある部位は、ウイルスなどの外来侵入生物が免疫系から逃れて潜伏する場所にもなり得る。HIV陽性で抗レトロウイルス療法を受けている複数の患者の性別適合手術により不要となった精巣を調べた研究から、治療により血液中にはHIVが検出されなくなった患者の全員で、少なくとも一方の精巣にはHIVのDNAが残っていることが明らかになった。また、ジカウイルスやエボラウイルスの場合は、感染から数カ月後、体内の他の部位からウイルスが消えた後に、精液中で検出されたことが報告されている。ことにジカウイルスでは、感染後134日もたって、血液や唾液中にウイルスが全く検出されなくなってからも精液中にその存在が確認された。同じく免疫特権のある眼や脳に比べると、精巣の免疫特権についての研究は、使用に適したサンプルの入手が難しいこともあって大きく遅れていたが、最近になってライディッヒ細胞やセルトリ細胞など、免疫特権に関わる多様な細胞を含むオルガノイドモデルが作製されて複雑な状況の解明が進み、免疫系の働かない部位でのウイルス除去の方法が関心を集めつつある。 Full text PDF 目次へ戻る