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感染症:腸内マイクロバイオームに存在する多様な血流中病原体の高精度での識別

Nature Medicine 24, 12 doi: 10.1038/s41591-018-0202-8

個々の血流感染患者について総合的な評価を行う際には、感染源特定が試みられる。病原体は、腸内細菌相、皮膚、外部環境のようなさまざまな場所に起因している可能性があるため、感染の発生源が確実に特定されれば、その感染源の管理に重点を置いた、的確な治療介入が可能になる。院内感染予防対策は、さまざまな病原体の発生源を仮定し、それに基づき行われることが多いが、このような仮定が不正確であれば治療介入を行っても病原体への曝露を減らせないことになる。今回我々は、血流中病原体とその発生源候補とを正確に組み合わせるための効率化されたバイオインフォマティクス手法を開発し、StrainSifterと命名した。次いでこの手法を活用して、造血細胞移植レシピエントのコホートで、血流中病原体のリザーバー候補が腸内細菌相であるかを調べた。大腸菌(Escherichia coli)および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)による血流感染を起こした患者では、これらの細菌が同時に腸内にも定着していることが見いだされ、血流感染の感染源が腸である可能性が示唆された。また、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)や表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)などの、典型的な非腸内病原体が腸内細菌相中に存在した症例も複数見つかり、このような菌による血流感染の感染源は環境や皮膚であるというこれまでの通説に疑問を投じる結果となった。多様な血流感染の感染源を識別する我々の手法は、院内感染のより正確な追跡や予防を容易にすると考えられる。

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