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腎不全:血小板活性化によって促進されるマクロファージ細胞外トラップ形成は、横紋筋融解症によって誘発される急性腎障害の主要なメディエーターである

Nature Medicine 24, 2 doi: 10.1038/nm.4462

横紋筋融解症は、骨格筋損傷と、それに続いて起こる被損傷筋細胞の内容物の体循環への放出によって引き起こされる深刻な症候群である。筋肉の損傷は、激しい運動、筋肉の低酸素状態、薬物治療、あるいは薬物乱用によって生じることが最も多く、急性腎障害(AKI)のような、生命を脅かす合併症につながることがある。横紋筋融解症とAKIの併発は、地震などの天災や戦争やテロのような人災の犠牲者で広く見られる緊急事態の1つ、クラッシュ症候群(挫滅症候群)の際にも起こる。この型のAKIで腎機能障害を誘発するのは、損傷を受けた筋肉から放出されるミオグロビンであると考えられている。最近になって、横紋筋融解症に誘発されるAKIの発症機序にマクロファージが関与することが示されたが、詳細な分子機構は解明されていない。本研究では、横紋筋融解症のマウスモデルにおいて、マクロファージがDNA繊維と顆粒タンパク質から構成される細胞外トラップ(ET)を放出することを示す。横紋筋融解症の際に壊死した筋細胞から放出されたヘムによって活性化された血小板は、マクロファージ細胞内での活性酸素種の産生やヒストンのシトルリン化の増強によって、マクロファージ細胞外トラップ(MET)の産生を増やした。今回我々は、横紋筋融解症に誘発されるAKIにMETが果たす予想外の役割に加えて、血小板がミオグロビン由来のヘムのセンサーであることを、我々の知る限りで初めて報告する。これまで知られていなかったこの機構は、このような疾患での治療標的になる可能性がある。我々はさらに、横紋筋融解症に続いて起こるAKIを予防するための新しい治療手段を見いだした。これによってクラッシュ症候群の患者の一部を救済できる可能性がある。

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