Article 結核:アカゲザルでのサイトメガロウイルスを使ったワクチンによる結核予防 2018年1月15日 Nature Medicine 24, 2 doi: 10.1038/nm.4473 結核(TB)は、BCG(bacille Calmette–Guérin)ワクチンが広く普及しているにもかかわらず、単一の感染性菌(Mycobacterium tuberculosis:Mtb)による全世界の死因の第1位であり続けている。今回我々は、アカゲザルで2つの独立したMtbチャレンジ感染研究を行い、Mtb抗原インサートをコードするアカゲザルサイトメガロウイルスベクター(以下、RhCMV/TBとする)を用いた皮下ワクチンの接種によってエフェクターが高度に分化し、循環中および組織内に常在するMtb特異的CD4+およびCD8+記憶T細胞応答が誘導・維持されることを明らかにした。このワクチンは、最初のワクチン接種のほぼ1年後に行ったMtb Erdman株の気管支内チャレンジ感染の後のMtb感染と病状(肺および肺以外)を、ワクチン接種しなかった対照に比べて68%低下させることができた。2つの研究で計34頭のアカゲザルがRhCMV/TBワクチンを接種され、そのうちの14頭(41%)では、コンピューター断層撮影もしくはチャレンジ感染後の死体解剖で、結核の病状が全く見られなかった(これに対してワクチンを接種されなかった対照の17頭では、全てで結核の病状が見られた)。さらに、これらの結核の病状が見られなかったアカゲザルのうちの10頭は全ての組織がMtb培養陰性で、Mtb Erdman株を用いたアカゲザルチャレンジ感染モデルでは、例外的に長期間にわたってワクチンの効果が見られた。これらの結果は、免疫のエフェクター応答が結核菌感染を最初期段階で阻止できれば、病原性が高いMtbをワクチンによって完全に免疫制御できることを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る