脂肪代謝:褐色脂肪組織の熱産生による適応にはNrf1が仲介するプロテアソーム活性が必要である
Nature Medicine 24, 3 doi: 10.1038/nm.4481
脂肪細胞は非常に大きな適応能力を備えていて、栄養過剰、絶食、または低温曝露に対応する。そのため、脂肪細胞は適正な代謝による健康維持に重要な細胞種の1つとなっている。小胞体は細胞の恒常性維持に不可欠な細胞小器官だが、脂肪細胞での代謝に問題が生じた際に小胞体が適応する機構は明らかになっていない。本論文では、褐色脂肪組織(BAT)の熱産生機能にはプロテアソーム活性の適応的上昇が必要で、これは細胞でのタンパク質の品質管理を確保するためであることを示す。さらに我々は、小胞体に局在する転写因子のNfe2l1(nuclear factor erythroid 2-like 1;別名Nrf1)がこの過程の重要な推進因子であることを突き止めた。低温適応によってBATでNrf1が誘導されると、プロテアソーム活性が上昇した。このような上昇は、小胞体の恒常性や細胞の完全性の維持に極めて重要であり、特に細胞の熱産生活性が高い場合にはその重要性が高まることが分かった。マウスでは、熱産生が起こる条件下でNfe2l1(Nrf1)を褐色脂肪細胞特異的に欠失させると、小胞体ストレス、組織炎症、ミトコンドリア機能の著しい低下、およびBATの白色化が引き起こされた。遺伝学的手法あるいは食餌によって作製された肥満のマウスモデルでは、外来性Nrf1の発現、もしくはプロテアソーム活性化因子PA28αの投与によってBATのプロテアソーム活性を刺激すると、インスリン感受性が改善された。これらの結果から、Nrf1は、褐色脂肪細胞の機能を保護するこれまでに知られていなかった因子であることが明らかになり、低温や肥満に適応するためにタンパク質代謝の品質管理をさらに強化していることが示された。