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がん:DKK2は細胞傷害性免疫細胞の活性化をカテニンに依存せずに抑制することで腫瘍に免疫を回避させる
Nature Medicine 24, 3 doi: 10.1038/nm.4496
免疫療法は現在、がん治療の新たな選択肢となっているが、その有効性はがんの種類によってばらつきがある。大腸がん(CRC)は概して、免疫チェックポイント阻害に対して抵抗性であり、これは、いまだに性質が明らかにされていない免疫抑制機構が存在することを示唆している。今回我々は、腸腫瘍細胞でのAPC(adenomatosis polyposis coli)欠失、あるいは黒色腫細胞での腫瘍抑制因子PTENの欠失がDKK2(Dickkopf-related protein 2)の発現を上昇させ、DKK2はその受容体LRP5と共に働いて腫瘍が免疫を回避する異例な機構を生じさせることを示す。腫瘍細胞によって分泌されたDKK2は、細胞傷害性リンパ球に作用し、LRP5を介してSTAT5の核局在を妨害することによりSTAT5シグナル伝達を阻害するが、この阻害はLRP6やWnt–β-カテニン経路とは無関係である。遺伝学的手法、もしくは抗体を用いてDKK2を除去すると、腫瘍でナチュラルキラー(NK)細胞およびCD8+ T細胞が活性化されて腫瘍の進行が妨げられ、PD-1阻害の影響がさらに強くなる。従って、我々はこれまで知られていなかった腫瘍免疫抑制機構を突き止め、さらにCRCおよび一部の黒色腫に特に関連する免疫治療標的を明らかにした。