Letter
がん治療:経口投与可能な低分子スプライシング調節剤H3B-8800はスプライソソーム変異型がんで致死性を誘導する
Nature Medicine 24, 4 doi: 10.1038/nm.4493
RNAスプライシング因子をコードするSF3B1、U2AF1、SRSF2遺伝子に頻発し、その機能を変化させる点変異が、がんのゲノム解析によって明らかになっている。これらの変異を持つがん細胞は、野生型(WT)スプライソソームの機能に選択的に依存しているが、治療目的でスプライソソームを標的とするための臨床的手段は現在のところ存在しない。本論文では、SF3b複合体調節剤で経口投与が可能なH3B-8800について報告する。H3B-8800は変異型スプライソソームを持つ上皮性腫瘍細胞や血液腫瘍細胞を選択的かつ強力に殺傷する。H3B-8800のこのような殺細胞効果は、SF3b複合体との直接相互作用によるものであり、SF3bの構成成分をコードする複数の遺伝子に変異が生じている薬剤抵抗性細胞ではH3B-8800活性が失われることで実証された。H3B-8800はWTおよび変異型のスプライソソーム活性を調節するが、スプライソソーム変異型細胞が選択的に殺されるのは、GCが豊富な短いイントロンの滞留による。このようなイントロンはスプライソソームの構成成分をコードする遺伝子に豊富に存在する。これらのデータは、スプライソソーム変異型がんではスプライシングの調節が治療に使える可能性を実証している。