マイクロバイオーム：ヒトマイクロバイオーム研究の現状

ヒトのマイクロバイオームと疾患、すなわち肥満、炎症性腸疾患、関節炎、自閉症などとのつながりの解明は急速に進みつつある。ヒト試料に付随する微生物群集ゲノムのDNA塩基配列解読の処理能力や正確さは大きく改良され、またトランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、イムノームの解析やモデル系での機構解明研究に助けられて、病的状態と健常な状態の両方においてマイクロバイオームの構造と機能を解明するための手法は飛躍的に向上した。しかし、残された難問はまだ多い。本総説では、ヒトでの研究に主に注目しながらこれらの難問について概説し、既存の知識を活用して相関関係から因果関係の解明へ進み、さらに最終的には治療への応用にまで速やかに到達することを目指す研究戦略について論じる。