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NEWS FEATURE:HIVとアルツハイマー病という2つの疾患の物語
Nature Medicine 24, 4 doi: 10.1038/nm0418-376
エイズの流行が始まった当初は、患者の中枢神経系が破壊されるのを阻止する手段はほとんどなかった。HIV感染者では脳炎やある種の認知障害が広く見られ、それらはまとめて「HIV関連神経認知障害(HAND)」と呼ばれた。しかし、HIV感染者に対する効果的な治療法が開発されると死亡者数は大幅に減り、それとともに重篤なHANDを患う患者の数も減少した。現在、米国では治療を受けているHIV感染者の30%から50%でHANDが見られるが、その大半はさほど重症ではない。だが最近、HIV患者でのアルツハイマー病の発症や進行状況を調べた一部の研究者は、HIVがHANDとは別種の、アルツハイマー病に似たアミロイド沈着を伴う神経変性疾患を起こしやすくする可能性を懸念している。アルツハイマー様の症状が始まる年代である60歳代の人々がHIV陽性集団に占める割合が増加しつつある現在、この2つの疾患の間の関連は深刻な問題となりかねない。関連について否定的な研究者も少なくないが、これを緊急の課題として取り組むグループも増えつつある。