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HIV:修飾Fcドメインを持つ抗体の単回注射はSHIV感染に対する持続的な防御を誘導する

Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0001-2

HIV-1に対する有効で安全なワクチンが存在しない現在、広範囲中和抗体(bNAb)の投与はウイルス伝播を防ぐための代替手段として理にかなっている。今回我々は、アミノ酸置換をコードする2つの変異(M428LおよびN434S、まとめてLSとする)を、非常に強力なHIV特異的bNAbである3BNC117および10-1074 bNAbのFc(crystallizable fragment)ドメインをコードする遺伝子に導入して、これらのbNAbの半減期を延長し、アカゲザル(Macaca mulatta)粘膜へTier2 SHIVAD8-EOを低用量反復投与した後の感染防御における効果を評価した。10-1074-LSモノクローナル抗体の単回静脈注入は、ウイルス感染を大幅に遅らせたが(18〜37週間、中央値27週間)、3BNC117-LS bNAbの防御効果はもっと弱かった(防御期間は11〜23週間、中央値17週間)。10-1074-LSモノクローナル抗体の血清中濃度は徐々に低下して26~41週目の間に全てのレシピエントで検出不能になるが、3BNC117-LS bNAbの半減期はこれより短かった。遺伝的多様性や中和抵抗性を示すHIV-1株に対する免疫予防をモデル化するために、3BNC117-LSと10-1074-LSの2種類のモノクローナル抗体を組み合わせ、臨床条件により近い皮下注射によってサルに投与した。皮下注射によって投与された抗体混合物に含まれる各bNAbの量は、静脈注射によって投与された1種類のモノクローナル抗体の量のほぼ3分の1だったが、モノクローナル抗体混合物はアカゲザルを感染から防御した(中央値20週間)。3BNC117-LSと10-1074-LSを組み合わせて使用した場合にアカゲザルで観察された防御期間の延長は、HIV感染を防御する目的で半年または1年ごとに抗体投与を行うという、ヒトに対する有効な免疫予防計画に応用できると考えられる。

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