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アルツハイマー病:ヒトiPSC由来ニューロンで見られるアポリポタンパク質E4の毒性作用の出現は小分子の構造修正剤によって改善する

Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0004-z

アルツハイマー病(AD)治療薬を開発するためのこれまでの取り組みでは、動物実験で有望とされたものがヒトの治験ではいずれも失敗しており、ヒトモデル系でのAD研究が緊急に必要であると考えられている。APOE遺伝子産物のバリアントであるアポリポタンパク質E4(ApoE4)は、ADの重要な遺伝的リスク因子である。本研究では、ApoE4を発現する誘導多能性幹細胞(iPSC)から作製したヒトのニューロンを用い、ApoE4を発現するニューロンではアミロイドβ(Aβ)ペプチドの産生増加とは無関係にタウのリン酸化レベルが高く、GABA作動性ニューロンの変性が見られることを示す。ApoE4は、ヒトニューロンではAβ産生を増加させるが、マウスのニューロンでは増加は起こらない。遺伝子編集によってApoE4をApoE3に変換すると、このような表現型が救済されたことから、ApoE4の特異的影響が明らかになった。APOEを欠失するニューロンは、ApoE3を発現するニューロンと同様の挙動を示した。さらにApoE4発現の導入によって病的表現型が再現されたことから、毒性の影響はApoE4から生じたと考えられる。ApoE4発現ニューロンを、構造を修正する小型分子で処理すると、有害な影響が低減された。従って、ApoE4の病原性のコンホメーションの修正は、ApoE4が関連するADに対する治療法となる可能性がある。

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