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免疫:精密な免疫プロファイリングを行うためのT-ATAC-seq法
Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0008-8
T細胞は、T細胞受容体(TCR)をコードする遺伝子中に膨大な多様性を作り出す。個々のクローンはこのことによって特定のペプチド–主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)リガンドを認識できるようになる。我々は、個々のT細胞のTCRの特異性とエピジェネティックな状態についての情報を得るために、TCRをコードする遺伝子の塩基配列解読と
ATAC-seq(assay for transposase-accessible chromatin with sequencing)を単一細胞レベルで組み合わせて用いることにした。T-ATAC-seq(transcript-indexed ATAC-seq)と名付けたこの手法を使って、不死化白血病T細胞、健常ボランティア由来の初代ヒトT細胞、患者試料由来の初代白血病T細胞におけるエピジェネティックなシグネチャーを明らかにした。健常者由来の末梢血中CD4+ T細胞では、ナイーブT細胞状態や記憶T細胞状態のシスおよびトランス調節因子が明らかになり、また、表面マーカーによって区分されたT細胞集団ではかなりの不均一性が見いだされた。白血病型の皮膚T細胞リンパ腫患者の集団では、T-ATAC-seqを使うことで悪性クローンから生じたシグナルと、T細胞の背景ノイズから生じたシグナルを分離できるようになり、同一患者由来のT細胞で白血病性調節経路と非白血病性調節経路を特定できた。従って、T-ATAC-seqはT細胞クローンのエピジェネティックな全体像を解析することができる新しい手法であり、T細胞性悪性腫瘍、免疫や免疫療法の研究に有用となると考えられる。