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がん治療:転移性乳がんで体細胞変異の免疫認識が完全かつ持続的ながん退縮につながる
Nature Medicine 24, 6 doi: 10.1038/s41591-018-0040-8
チェックポイント阻害や抗腫瘍リンパ球の養子移入を用いる免疫療法は、黒色腫や喫煙による肺がん、膀胱がんなどの高レベルの体細胞変異を持つがんの治療には有効だが、よく見られる変異率が低い上皮性がん、つまり消化管や乳腺、卵巣などで生じるがんにはあまり効果がないことが明らかになっている。体細胞変異を起こした遺伝子がコードするタンパク質を特異的に標的とする自己リンパ球の養子移入は、転移性の胆管がん、結腸がん、子宮頸がんの患者で他覚的にかなりの退縮をもたらすことが臨床で確かめられている。今回我々は、化学療法抵抗性でホルモン受容体(HR)陽性の転移性乳がん患者で、SLC3A2、KIAA0368、CADPS2、CTSBという4つのタンパク質の変異型に反応する腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)による治療を行った症例について報告する。これらの変異型タンパク質特異的なTILの養子移入をインターロイキン2(IL-2)投与やチェックポイント阻害と同時に行ったところ、転移性乳がんの持続的な完全退縮が見られた。この治療は現在も22か月を超えて進行中であり、このような患者の治療に対する新たな免疫療法にあたるといえる。