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がん悪液質:転移がんは骨格筋でのZIP14の発現上昇を介して悪液質を促進する
Nature Medicine 24, 6 doi: 10.1038/s41591-018-0054-2
転移がんの患者は、悪液質と呼ばれる骨格筋の著しい減少や機能喪失を発症する。悪液質は、患者の予後不良や死亡率の上昇に関与するが、その原因となる機構はほとんど解明されていない。本論文では、金属イオン輸送体であるZIP14(ZRT-and IRT-like protein 14)が、がん誘発性悪液質の重要な要因であることを明らかにする。ZIP14の発現は、悪液質を起こしたマウスの筋肉や転移がん患者で上昇しており、その発現はサイトカインTNF-αおよびTGF-βの刺激によって誘導される。Zip14を生殖系細胞除去あるいは骨格筋特異的に欠失させた転移がんモデルマウスでは、筋萎縮が抑制された。筋前駆細胞では、ZIP14を介する亜鉛の細胞内取り込みがMyoDやMef2cの発現を抑制して、筋細胞の分化を阻止することが見いだされた。一方、分化した筋細胞ではZIP14による亜鉛の細胞内蓄積によってミオシン重鎖の顕著な減少がもたらされたことは重要である。これらの結果は、転移がんが誘発する骨格筋萎縮では「亜鉛恒常性の変化」がこれまでに認識されていなかった重要な役割を担うことを明確に示しており、ZIP14が治療標的になることを示唆している。