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時刻を気にする
Nature Medicine 24, 6 doi: 10.1038/s41591-018-0069-8
体の概日リズムに基づいて薬剤投与の時刻を決める「時間治療」の発端の1つとなったのは、50年以上前に白血病マウスで行われた実験である。この研究はその後、標的タンパク質が概日リズムに基づいて増減することを踏まえて投薬時間や投薬量を決め、肝臓がんや心血管疾患の薬剤の効果を増強するためのコンピュータープログラムCYCLOPSの開発につながった。こうした投薬法については懐疑的な研究者が多かったが、2017年のノーベル医学生理学賞が概日リズムの分子機構解明に対して贈られたことで時間治療の概念が見直され、患者の遺伝学的プロファイルなどと組み合わせれば多様な疾患で治療の有効性を高め、副作用を制限し、さらには正常な腸内細菌叢の維持にも有用となるのではないかと、健康と疾患の両方の分野での応用が期待されるようになった。米国では現在、概日リズムの特定のタイミングで化学療法薬を投与することの有効性を調べる史上初の臨床試験が、膠芽腫患者を対象にして行われている。