Article

がん治療:肺がんでSWI/SNF複合体に生じた変異は標的化が可能な酸化的リン酸化依存性を誘導する

Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0019-5

肺がんは深刻な病気で、がんによる死亡の原因のトップを占め続けている。標的化療法と免疫療法の改善にもかかわらず、肺がん患者の大多数には有効な治療法がなく、これまでとは異なる治療方法が必要なことは明らかである。ゲノム研究によって、SMARCA4およびARID1Aを含むSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体の構成因子に頻繁に変異が生じることが突き止められている。この複合体の変異によって駆動される腫瘍発生の機構を解明するために、我々は肺上皮のSmarca4を除去することにより、肺腺がんの遺伝子改変マウスモデルを作製した。Smarca4は真の腫瘍抑制因子として作用しており、その不活性化はp53喪失やKras活性化と協働していることが分かった。遺伝子発現解析から、SMARCA4変異腫瘍では酸化的リン酸化(OXPHOS)が増強されたことを示すシグネチャーが明らかになった。さらに、SMARCA4変異細胞では酸素消費が増大していて、呼吸能も上昇していることが分かった。SMARCA4変異肺がん細胞株および異種移植片腫瘍が、新規な小分子のIACS-010759(現在は臨床開発中)によるOXPHOS阻害に対して高い感受性を示したことは重要である。また、SMARCA4欠損細胞は、エネルギーストレスに対する転写応答が鈍化していて、合成致死的な相互作用が生じること、こうした相互作用は治療に利用可能と考えられることも分かった。今回得られた知見は、SWI/SNF変異腫瘍に対する治療薬としてのOXPHOS阻害剤の作用機構に関する基盤を明らかにしており、薬剤のさらなる開発を進める際に有用となる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度