がん治療:変異型KRASによって駆動されるがんはPTPN11/SHP2ホスファターゼに依存する
Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0024-8
非受容体型タンパク質チロシンホスファターゼのSHP2は広範囲にわたって発現しており、PTPN11にコードされていて、増殖因子やサイトカイン、インテグリンに対する多数の受容体の下流でシグナル伝達に関わっている。SHP2は、RAS–MAPKの完全な活性化に必要とされ、またJAK–STATシグナル伝達の負の調節因子としても働いているため、発がんのシグナル伝達経路に必須の因子であることが確実とされている。最近、SHP2の強力な新規アロステリック阻害剤が、受容体チロシンキナーゼ駆動型のがんに使える治療選択肢であることが報告されたが、KRAS変異型腫瘍細胞株ではin vitroで効果がないことが示された。今回我々は、発がん性のKRAS駆動型腫瘍でSHP2が果たす重要かつ不可欠な役割について報告する。Ptpn11を遺伝学的に欠失させると、変異型KRASにより駆動される膵管腺がんや非小細胞肺がんのマウスモデルで腫瘍発生が大幅に抑制された。我々は、発がんの間に変異型KRASはSHP2への依存が不可欠であることの証拠を得た。定着した腫瘍でSHP2を欠失あるいは阻害すると、腫瘍のプログレッションは遅れるが、腫瘍の退縮を起こすには十分でなかった。しかし、SHP2はMEK阻害に対する抵抗性機構には必要であった。SHP2とMEKの両方を標的とすると相乗効果が見られ、膵管腺がんや非小細胞肺がんのマウスモデル、これらのがんのヒト患者に由来するオルガノイド、および異種移植片モデルで持続的な腫瘍増殖抑制が起こった。我々のデータは、SHP2/MEKの二重阻害が、KRAS変異型腫瘍に対する標的化治療法として臨床的に有用であることを示している。