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がん:DNA修復過程はp53に依存する腫瘍抑制の重要なメディエーターである
Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0043-5
p53は、アポトーシスの誘導に加えて、おそらくは細胞周期停止や細胞老化も引き起こして腫瘍の発生を抑制しているとずっと考えられてきた。しかし、これら3つの過程を組み合わせて欠損させても、p53欠損の際に観察されるような自然発生的な腫瘍形成は起こらない。従って、p53依存性の腫瘍抑制機能の重要なメディエーターとして働く、さらに別の機構が存在すると考えられる。我々はそのような機構を明らかにする目的で、がんへの感受性を高めた遺伝的条件下でp53によって調節される遺伝子を探索するshRNAスクリーニングをin vivoで行った。Zmat3、Ctsf、Cav1のノックダウンは、p53が駆動するアポトーシス、細胞周期停止、細胞老化の重要なエフェクターであるPUMAとp21も存在しない場合にだけ、リンパ腫/白血病の発生を促進することが分かった。野生型の条件下では、DNA修復遺伝子Mlh1の喪失によってリンパ腫が引き起こされ、Mlh1の強制発現は、p53喪失による腫瘍発生を遅らせた。p53の直接の標的遺伝子でDNA修復に関与するものについてさらに調べたところ、Mlh1、Msh2、Rnf144b、Cav1、Ddit4のノックダウンがMYCによるリンパ腫発生をp53のノックダウンと同程度に加速させることが分かった。まとめると、これらの知見は、p53によって調節される複数の過程の機能が広範囲にわたって重なり合っていることががんに対する安全装置となっていること、また、DNA修復の協調はp53が腫瘍の発生を抑制する重要な過程と思われることを明らかにしている。