Article

がん:STAT3は脳転移に必要とされる一部の反応性アストロサイトを標識する

Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0044-4

脳の微小環境は、腫瘍転移開始細胞にとりわけ強い選択圧を加えている。転移が成功する場合はこのような制御が回避されるのだが、その仕組みはほとんど分かっていない。反応性アストロサイトはこの脳内微小環境の重要な構成成分で、転移巣に侵入することなく脳への転移を制限している。本論文では、脳転移細胞が、転移巣周辺にある反応性アストロサイトの一部でSTAT3(signal transducer and activator of transcription 3)によって駆動される転移促進プログラムの乗っ取りを誘導し、維持することを示す。このような反応性アストロサイトは、自然免疫系および獲得免疫系を調整する作用によって転移細胞にとって有用となる。患者では、反応性アストロサイト中の活性型STAT3の量は、頭蓋内転移の診断後の生存低下と相関している。反応性アストロサイトでSTAT3シグナル伝達を遮断すると、多様な原発腫瘍細胞供給源からの実験的脳転移が、定着がすでに進んだ段階であっても、減少する。また、STAT3を阻害する安全で経口投与可能な薬剤は、脳転移を含む進行した全身性疾患の患者で著しい抗腫瘍効果を示すことが分かった。この薬剤に対する応答は中枢神経系で顕著であり、複数の例で完全奏功が達成された。腫瘍の脳転移が相当高い罹病率や死亡率をもたらすことを考慮すれば、今回の結果は、二次性脳腫瘍患者で生存期間を延長する新規な治療法を明らかにしたものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度