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がん:非小細胞肺がん中のT細胞の単一細胞塩基配列解読による全体的特性付け
Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0045-3
がん免疫療法は、非小細胞肺がんの臨床治療で奏功例が続いているが、有効性は腫瘍浸潤リンパ球の量と性質に部分的に依存しているため、ばらつくことがある。今回我々は、腫瘍浸潤リンパ球の組成、細胞系列、および機能的状態のベースラインの全体像を明らかにするために、治療未経験の非小細胞肺がん患者14人に由来するT細胞1万2346個について、単一細胞RNA塩基配列解読と高深度解析を行った。複合的発現およびT細胞抗原受容体に基づく細胞系列追跡によって、組織間エフェクターT細胞のかなりの部分が高い移動性を持つことが分かった。疲弊を起こしている腫瘍浸潤CD8+ T細胞に加えて、疲弊に先立つ状態を示す細胞クラスターが2つ見つかり、また、疲弊T細胞に対する「前疲弊T細胞」の割合が高いことは肺腺がんのより良好な予後と関連していた。さらに、抗原特異的制御性T細胞(Treg)の活性化マーカーであるTNFRSF9の二峰性分布を特徴とする腫瘍Tregについて、さらなる不均一性が観察された。IL1R2を含むこのような活性化腫瘍Tregの遺伝子シグネチャーは、肺腺がんの不良な予後と相関していた。今回の研究は、患者の層別化のための新たな方法となり、また肺がんにおけるT細胞の機能的状態と動態の解明を進める助けとなろう。