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脂肪肝:非糖尿病性肥満の女性で見られた肝臓脂肪症の分子フェノミクスとメタゲノミクス
Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0061-3
肝臓脂肪症は多因子疾患であり、肥満患者に見られることが多く、非アルコール性脂肪性肝疾患の前兆の1つである。我々は、FLORINASH研究に登録された病的肥満の女性からなり、詳しい特徴が明らかになっている2つのコホートで、糞便メタゲノムのショットガン塩基配列解読と、分子フェノミクス(肝臓のトランスクリプトームと、血漿および尿のメタボローム)とを組み合わせて解析を行い、腸のマイクロバイオームと宿主のフェノームを肝臓脂肪症に結び付ける分子ネットワークを明らかにした。脂肪症の患者は、微生物遺伝子の存在量が低下しており、食物中の脂質の処理能や内毒素(主にプロテオバクテリアに由来する)の生合成能が遺伝的に増強されていて、肝臓の炎症と、芳香族アミノ酸や分枝鎖アミノ酸の代謝の調節異常が見られた。糞便微生物相の移植とフェニル酢酸(微生物によって生成される芳香族アミノ酸の代謝産物)の慢性的投与によって、脂肪症や分枝鎖アミノ酸の代謝を引き起こせることが明らかになった。分子フェノミクスのシグネチャーは脂肪症を予測でき(曲線下面積 = 87%)、また脂肪症フェノームに影響を及ぼす腸のマイクロバイオームと一致する(> 75%の共有変動)ことから、マイクロバイオームを基盤とする治療を介した脂肪症の治療は実施可能と考えられる。