神経変性疾患:ポリ(GR)はC9orf72に関連する前頭側頭型認知症および筋萎縮性側索硬化症でタンパク質翻訳とストレス顆粒の動態を障害する
Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0071-1
前頭側頭型認知症(FTD)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)の主な遺伝的原因は、C9orf72でのG4C2反復配列の伸長である。この伸長がc9FTD/ALSを引き起こす機構としては、反復配列を含むRNAの毒性や、このような転写産物から翻訳されたジペプチドリピートタンパク質の毒性が考えられている。我々は哺乳類のin vivoモデルにおいて、ポリ(GR)ジペプチドリピートタンパク質のc9FTD/ALSの発症機序への関与を調べるために、脳でGFP–(GR)100を発現するマウスを作製した。GFP–(GR)100マウスは、細胞質に散在性ポリ(GR)が蓄積することによって、加齢依存的な神経変性、脳萎縮、運動障害、および記憶障害を発症した。GFP–(GR)100マウスでは、ポリ(GR)はリボソームサブユニットおよび翻訳開始因子eIF3ηと共局在していた。この局在が、c9FTD/ALS患者でも見られることは重要である。GFP–(GR)100マウスではリボソーム関連遺伝子の発現量が異なることと合わせて考えると、これらの知見は、ポリ(GR)が仲介するリボソームの機能不全を示している。実際、ポリ(GR)はHEK293T細胞でカノニカルおよび非カノニカルなタンパク質翻訳を阻害し、またストレス顆粒の形成を誘導してこの顆粒の分解を遅延させた。これらのデータは、ポリ(GR)は、タンパク質翻訳とストレス顆粒動態を障害し、その結果として慢性の細胞ストレスを引き起こし、さらに細胞の有効なストレス応答の発揮を妨害することでc9FTD/ALSの一因となっていることを示唆している。従って、ポリ(GR)を減少させること、あるいはポリ(GR)とリボソーム関連タンパク質やストレス顆粒関連タンパク質との相互作用を阻害することは、恒常性を回復する治療戦略候補となるかもしれない。