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がん:小児神経膠芽腫細胞とびまん性内在性橋膠腫細胞のサブクローン集団間で見られる機能的多様性と協調性

Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0086-7

小児の神経膠芽腫(pGBM)やびまん性内在性橋膠腫(DIPG)に対する効果的な治療法の開発が失敗する一因となっているのは、これらの腫瘍に内在する不均一性である。我々は、このような腫瘍に見られる不均一性の程度をサブクローンのゲノム解析によって定量的に評価し、また、患者由来のサブクローンモデルをin vitroおよびin vivoで作製することにより、異なる腫瘍亜集団が相互作用して腫瘍発生を促進する可能性を明らかにすることを試みた。塩基配列を解読した142の腫瘍の解析から、多数の腫瘍サブクローンが明らかになった。これらは、多回サンプリングによって観察されたように、空間的・時間的に安定した状態で共存している。我々は、遺伝子型と表現型が異なる亜集団で、腫瘍原性と治療抵抗性を増強するように協調的に働いていると考えられるものを単離した。1%未満の細胞に存在するH4K20ヒストンメチルトランスフェラーゼKMT5BSUV420H1)の不活性化変異はDNA修復を妨げ、ケモカインシグナル伝達とインテグリンの修飾を介してin vitroおよびin vivoで近隣細胞集団への浸潤と移動を増加させた。これらのデータは、まれな腫瘍亜集団であっても、全体として腫瘍発生に重大な影響を及ぼす可能性があることを明らかにするとともに、治療法の開発に新たな道筋を示している。pGBMとDIPGにおけるサブクローンの多様性とコミュニケーションの機構を明らかにすることは、障壁を越えて効果的な治療法を開発するための重要な一歩になるだろう。

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