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代謝:低温により誘導された精子のエピジェネティックなプログラム化は子孫での褐色脂肪組織の活性を増強する
Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0102-y
組織の機能性や全身の代謝を制御する環境からの影響については、最近の研究で関心が高まっている。しかし、このような刺激がヒトの熱産生やBMI(body mass index)に影響するかどうかは、まだ調べられていない。今回我々は後ろ向き研究により、ヒトにおいて、褐色脂肪組織(BAT)の存在と受胎の季節がBMIと関連することを示す。マウスでは、雄を交尾前に低温暴露すると雄の子孫での全身の代謝が改善され、食餌誘導性の肥満が起こりにくくなるが、雌マウスの寒冷曝露ではこうした影響は見られないことが分かった。雄マウスの精子のDNAメチロームとRNA塩基配列解読の統合解析から、共調節されるDMR(differentially methylated region)とDEG(differentially expressed gene)の複数のクラスターが明らかになり、子孫の代謝的健康状態の改善は、BAT形成増大とニューロン新生増加によるものであることが示唆された。この結論は、子孫での細胞自律的な研究で、成熟した活性型褐色脂肪細胞の形成能力の上昇、ニューロン密度の改善、低温刺激応答でのBATからのノルエピネフリン放出の増加が明らかになったことからも裏付けられた。まとめると、我々の結果は、ヒトおよびマウスにおいて、季節性および実験的な低温曝露が精子のエピジェネティックなプログラム化を誘導し、その結果として子孫が高活性のBATを持ち、過剰栄養と低体温に対する順応が改善されることを示している。